女と男の医療よもやまばなし 1

「いのち輝く未来財団」。何とも素晴らしいネーミングですね。血沸き肉躍るような躍動感が伝わってきます。
「未来」と云うのは、もちろん自分の「明日」「将来」「老後」を意味しているのでしょうが、その「未来」が充実した生き生きしたものであって欲しいと願って名付けられました。そして、この「未来」には自分の未来ばかりでなく次世代の「子どもたちの未来」も健康で明るいものであって欲しいとの願いも込められています。
「いのち輝く」の意味するところは、ひとそれぞれ、千差万別でしょうね。私は、女と男あってこその「いのち輝く未来」ととらえています。女と男がいればこそ、次世代も生まれると云うものです。

ところで、医療の世界でも昨今は男女差が話題に上ることも多くなりました。日本性差医学・医療学会もできて、病気の性差について様々な研究が行われています。それによると、女性が罹りやすい病気や、男性が罹りやすい病気があるそうです。痛風や急性心筋梗塞、肺がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD)などは男性に多く、自己免疫疾患や高脂血症、骨粗鬆症、関節リウマチ症、うつ病などは女性に多く、ある特定の病気のかかりやすさには男女差があるそうです。

私たちは、病気のなりやすさに男女差があるなら、病気の治療に使うくすりの使用量にも男女差があるはずだと考えて、そのような資料がないか調べてみましたが、見つかりませんでした。それなら自分たちで調べてみようと、調査した結果が下図です。

 

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この研究で、全国25病院から2008年3月1か月間の院外処方せん発行枚数約185万枚を年齢別・男女別に解析しました。その結果、次のようなことが分かりました。

  1. 患者の年齢分布はU字曲線を描き、乳幼児期に多く思春期・青年期にかけて減少するが、壮年期から高齢期にかけて急激に増加する。
  2. 65歳以上の高齢者層で全処方せん発行枚数の約50%を占めていた。
  3. 小児期までは男子への処方せんが多く、青年期から54歳頃までは女性のほうが、処方せん発行枚数が多かった。
  4. 定年を迎える人の多い55歳から74歳までは男性の処方せん発行枚数が多く、75歳以上では長寿である女性の処方せん発行枚数が多かった。

さらに、男性に多く処方されるくすりや女性に多く処方されるくすりも数多く存在し、その様なくすりの種類は女性の方が多いこともわかりました。一方、男性と女性ではくすりの使用年代にも差がみられ、例えば、鎮痛剤や抗不安剤などの中枢神経系のおくすりは男性は30代から40代の働き盛りの世代で処方せん発行枚数が増えますが、女性では10代後半から20代の思春期や青年期で処方せん枚数が増えました。この原因としては、疾患の発症頻度や病態の性差が関係していると考えられています。薬剤師さんは、処方薬の服薬指導をする時にはくすりの使われ方には男女差があることを理解したうえで、一人ひとりに適した服薬指導をする必要があるということですね。男女差を意識した薬物療法を適正に行うためには、以上のような性差に関する医薬品情報を知っておくことが重要です。

本コラムを通じて、医療における性差の情報を発信していきたいと思います。 女性が健やかで明るく暮らせることは男性にとっても福音です。女性にとって良い医療は男性にとっても良い医療です。男女協力なくしては明るい未来は描けません。これからは、性差発現機構の研究がますます発展し、性差エビデンスに基づいた、男性にとっても、女性にとってもより良い医療がおこなわれる未来が来ることを願っています

Categories: くすり

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