糖尿病とがん 1

はじめに

 近年、糖尿病患者ではがんリスクが高まることが注目されています。糖尿病とがんは、その発症に生活習慣の影響を大きく受ける疾患です。なかでも肥満・喫煙・運動不足・アルコール多飲などの生活習慣が両者の共通要素としてまず挙げられます。がん死の多い日本では、糖尿病においてもがんは死亡の主因であり、世界的にはがんは死因の第2位、糖尿病は死因の第12位です。国内外で糖尿病患者が急増している現状を鑑みて、糖尿病とがんの関連性を探っていきましょう(註:本稿では,中年肥満者が主体の2型糖尿病について話を進めていきます)。

日本のデータ

 厚生労働省の2010年国民健康・栄養調査結果によりますと、30歳以上の糖尿病患者および糖尿病が強く疑われる人は男性の約17%、女性の約10%です。2002年には男女それぞれ約14%、約7%でした。男女とも年齢とともに患者数は増える傾向にあります。一方、平成17年のデータではがん全体の発症数は男性で約40人、女性で約30人でした。がんについても男女とも発症数は1975年以降増加し続けており、2005年には1975年の約3倍に増加していました。

糖尿病と関連するがん

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 国際的なデータを表1に示します。なかでも肝臓がん・子宮内膜がん・膵臓がんとの関連性が高いことが目につきます。興味深いことに、前立腺がんだけは糖尿病では発症率が低くなります。前立腺がんの発症には男性ホルモンの作用が大きく関わっており、人種によってその影響度が違うことが想定されています。なお、日本人に限定した相対リスクは、肝臓がん2.0、膵臓がん1.9、大腸がん1.4であり、ほぼ同じ傾向でしたが子宮内膜がんと前立腺がんに関しては関連性を認めませんでした。

日本糖尿病学会と日本癌学会からの共同声明

 このような状況を受け、2010年にはアメリカの糖尿病学会と癌学会が共同で、糖尿病とがんの関連性および臨床的対応について声明を出し、国際的に注目されました。日本でもつい最近、アメリカに倣って日本人向けの声明が日本糖尿病学会と日本癌学会からの共同で出されました。以下に,国民一般(患者を含む)への提言をまとめます。

● 糖尿病は、日本人では肝臓がん、膵臓がん、大腸がんのリスク増加と関連しています。他の種類のがんについては、一定の結論が得られていません。
● 健康的な食事、運動、体重管理、禁煙、節酒は糖尿病およびがんの予防につながる可能性があり、行うことが勧められます。
● 食事療法、運動療法、禁煙、節酒は、糖尿病の人にとってもがんの予防につながる可能性があります。
糖尿病の人は性別・年齢に応じて適切に、科学的に根拠のあるがん検診を受診することが推奨されます(表2)。糖尿病で肝炎ウィルスが陽性の場合には、医療機関を受診して肝臓がんのスクリーニングを受けることが推奨されます。
● 特定の糖尿病治療薬とがんとの関係については、現時点でははっきりした結論は得られていません。医師の指示に従って、良好な血糖コントロールを維持することが大切です。

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次回は糖尿病でがん発症が高まる仕組みと糖尿病治療によるがん発症への影響をお話しします。

 

参考文献

糖尿病とがんに関する委員会報告。春日 雅人、植木浩二郎、田嶼 尚子、野田 光彦、
大橋 健、能登 洋、後藤 温、小川 渉、堺 隆一、津金昌一郎、浜島 信之、中釜 斉、
田島 和雄、宮園 浩平、今井 浩三。
糖尿病 56(6):374~390,2013

Categories: 医科

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