高齢社会のデザイン6「高齢社会の可能性」

人類の遺伝子は4万年くらい前から大きくは変化していないといわれている。当然最長寿命もそう変化していないわけである。したがって、この4万年の間には、どの時代にも、数は少なくとも、百寿者(センチナリアン)は存在していたものと考えられる。この百寿者の近年の増加は目覚ましい。筆者たちが、我が国の初めての百寿者の調査を始めた1972年には、復帰した沖縄を加えても405人に過ぎなかった。したがって、現在はこの40年間に百倍以上に増加したことになる。
興味深いことに、百寿者の劇的な増加にも関わらず、毎年の最長寿者の年齢には増加の傾向が認められない。筆者自身の調査も加味して、これまでの世界の最長寿者は116歳くらいと考えてよい。120歳を超えた例はほとんど根拠がないといって差し支えないであろう。

4万年間、百歳に達する遺伝子を持った人類の平均寿命の50歳の壁が破られたのがわずか100年前に過ぎないというのも興味深い。エネルギー(カロリー)が行き渡り、動物性たんぱく質の供給が豊かになった欧米人の国々から順次平均寿命50歳の壁を突破していった。この点で遅れを取った我が国の平均寿命は30歳代の後半に低迷していた。
我が国の平均寿命が男女とも50歳を超えたのは終戦後の1947年のことであり、欧米先進国に半世紀の遅れを取ったことになる。しかし、戦後の食生活の改善をはじめとする長寿要因が開花し、現在世界トップランクの長寿を誇っている。
20世紀には人類の生物としての長寿が歴史上初めて全面開花したわけである。今後も最長寿命は延びることはないので、大多数が80歳から100歳を少し超えたところで一年草木が秋に一斉に朽ちるように死滅するというのが死亡パターンとなる。生存曲線のピンピンコロリである。
生物としての人類がもっとも開花する21世紀は人類のもっとも大きな可能性を内包していると考えたいが、実際には奇妙な閉塞感にさいなまれている。人類の成熟は人類の終末を意味すると説く宗教家も存在する。

未来に対して危機感を持つことは、何らかのブレークスルーにつながるので避けるべきことではない。もっとも避けるべきは、以前より栄養が良くなり平均寿命が延伸したことに不幸の根源があると後ろ向きの発想を持つことである。

 

コラムニスト
柴田 博 領域アドバイザー
人間総合科学大学保健医療学部長/大学院教授

 

 

 

 

 

『ほっとコラム』2011年11月18日掲載分より

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独立行政法人 科学技術振興機構
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