似ているお薬に注意

 言い間違い、書き間違い、読み間違い・・誰しも一度は経験があるのではないでしょうか。「恋人」と書くつもりが「変人」と書いてしまったり、「パプリカ」と「パエリア」を間違えてしまったり、「人間は顔じゃない」と言うつもりが「人間の顔じゃない」と言ってしまった、などという話をときどき耳にします。その中でも、個人的な印象ですが、カタカナは間違いやすいように思います。以前、「マイノリティ・リポート」というドキュメンタリー映画がありましたが、私は「マタニティ・リポート」だと思い込んでいました。日常生活では間違いがあっても、なんとなく意味は通じたり、笑ってすませられたりすることが多いと思いますが、これがお薬の名前の間違いであったら、大変なことになります。

 現在、医療用医薬品として約1万5千種類ほどのお薬があり、その1つ1つにそれぞれ名前がつけられています。お薬の名前には、化合物としての名前(一般名)と、医薬品として販売する際、製薬企業がつける名前(販売名)がありますが、それ以外にも略称や臨床試験時の記号でよばれるものもあり、1つの化合物がたくさんの名前を持つ場合もあります。漢方薬以外のお薬は主にカタカナで表記され、なかには非常に類似しているものもあり、注意が必要です。

いくつか例を下記にお示しします。

・ノルバスク(降圧薬) / ノルバデックス(抗がん薬)
・マイスタン(抗てんかん薬) / マイスリー(催眠・鎮静薬)
・タキソール(抗がん薬) / タキソテール(抗がん薬)
・コメスゲン(ビタミンB12) / コスメゲン(抗がん薬)

このようなよく似た名前のお薬を混同してしまうと重大な事故につながりかねません。実際に取り違えなどの間違いは多数報告されています。それを防ぐ一番の方法は、似たような名前をつけないことだと思います。上記のような間違えやすいお薬に、アマリール(血糖降下薬)とアルマール(降圧薬)がありましたが、取り違え事故防止のため、アルマールは販売名が「アロチノロール塩酸塩」へ変更されました。では、名前が変わらない場合はどのような対策が考えられるでしょうか。

処方時の間違いを防ぐために、いくつかの施設で行われている対策を示してみます。

○ 名前の類似したお薬は、名前の前に薬効をつける
例えば、(抗がん薬)ノルバデックス など
○ 名前の類似したお薬は、一般名で処方する
○ 処方を登録するときに、注意喚起のコメントを出す
○ 注意すべきお薬に、マークを表示する、または色を付けて表示する

 このようなシステム上の工夫とともに、名前の似ているお薬がある、と知っていることも大切だと思います。病院で働いていると、つい病院にあるお薬だけに目がいってしまいがちですが、病院にそのお薬がないために間違いが起きてしまう場合もあります。以前、ある入院患者さんに初めてセロクエル(抗精神病薬)が処方されたため、禁忌となる糖尿病(または既往歴)がないか電子カルテを確認していたところ、セロクエルが処方された理由がよくわかりませんでした。患者さんの持参したお薬にセロクラール(鎮暈薬)があったため、もしやと思い処方医へ連絡すると、セロクラールとの間違いだとわかりました。病院にセロクラールがなかったため、名前の似たセロクエルを処方してしまったようです。

 日々、様々な患者さんの処方せんを見ていると、お薬の量や飲み方など処方の内容が気になってしまいますが、本当にこのお薬でよいのかなという視点も忘れてはいけないと感じています。

Categories: くすり

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