日本人は寝酒がお好き? 睡眠薬がお好き?

寝られない。これほど苦痛なことはありません。

*日本人は寝酒が好き?

日本は不眠への対処として寝酒を選ぶ人の割合が約30%と諸外国に比べて最も高く、医師に受診する人の割合は約8%で最下位という国際調査結果があります。日本人は不眠を理由に医者にはかからず、寝酒で対処するという特徴があると言えます。しかし、寝酒はお勧めできません。なぜなら寝付くことはできても睡眠の質を悪くしてしまい、結果として「寝られない」からです。絶対にやってはいけないことは、睡眠薬をお酒で飲むことです。お酒によって睡眠薬の効果が異常に強く出てしまい、自分の無意識のうちにとんでもないこと(暴れる、物を壊す、人に危害を与える)をしてしまうことがあります。寝酒を続けるとアルコール依存にもなってしまいますから、寝るために飲むことはやめましょう。 

*日本人は睡眠薬が好き? 

さきほど日本は不眠が理由で医者にかからない国として特徴づけられる、と言いました。しかし一方で日本は睡眠薬、特にベンゾジアゼピン系という種類の薬の処方量が他国と比べて多い国であることも知られています。ある国際調査では、日本のベンゾジアゼピン系薬の人口当たりの消費量は欧米諸国の3~5倍でした。この種類の睡眠薬は、依存(薬が欲しくなる)や耐性(薬が効きにくくなる)の面に注意を払いながら使用することが必要です。
私は病院に勤務する薬剤師ですが、担当したある患者さんは入院当初、様々な種類の睡眠薬を5種類使っていました。体が動かなくなるように寝たい、という患者さんの要望に添っていった結果でした。患者さんとよく話し合い、日中に活発に活動したい、という希望を叶えるため、入院中に睡眠薬を減らしていくことを試みました。減量に挑戦した初日こそ不安は強かったものの徐々に薬の量と種類を減らしていき、最終的にはベンゾジアゼピン系の睡眠薬を一切使わずに寝られるようになりました。朝起きたときのふらつきやぼーっとした感じがない、体がとても軽い、ととても喜んでいました。
寝られるようになりたいから、かかりつけ医に睡眠薬は出してもらった。これで安心。でも本当のところは薬なんて飲まないで寝たい。だからもらっている薬、時々飲まないの。じつは、それが良くないのです…。睡眠薬を中途半端に使うと睡眠を余計に悪くしてしまいます。正しく睡眠薬を使うことにより、睡眠薬を使わなくても早期に寝られるようになります。専門の医師に睡眠の状況(寝つきが悪い、途中で起きてしまう、早く起きてしまう)を正しく伝え、適切な種類の睡眠薬を処方してもらいましょう。そして処方された薬を正しく飲み、寝られるようになったら医師の指示のもと徐々に薬を減らしていくことが重要です。

*不眠は病気の隠れ蓑?

「寝られない」背景には、様々な病気が隠れている可能性があります。不眠は高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病と密接に関わっていることが、また不眠はうつ病の前触れや再発の徴候であることが報告されています。うつ病は、日本の死因の第7位である自殺の原因の一つとして挙げられます。働き盛りの中高年では不眠を病気だとは思わずに受診をしない人も多く、自己判断で寝酒や一般用医薬品に頼る傾向があります。一般用医薬品の睡眠改善薬の売り上げが約50億円であることからも、不眠を抱えている人が医療に結び付いていない、あるいは医師からの処方薬では足らずにさらに追加の睡眠薬を欲している人がいる、という現状が見え隠れします。一般用医薬品の睡眠改善薬の成分は抗ヒスタミン剤です。これは他の一般用医薬品にも配合されている成分で、眠気を促す作用をもっていますが睡眠の質を改善するものではありません。たかが睡眠、されど睡眠。最近寝られていないなぁと思っているあなた、寝られないと愚痴をこぼしているお父さんお母さんを身近に見ているそこのあなた、ぜひ近くの薬剤師に相談するか専門医を受診して下さい。

Categories: くすり

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