【月命日の定期便 37か月め 小さな命の意味】

「先生たちのことを悪くは言いたくないが、でもやっぱり、あの時に先生がいなかったら子どもたちは助かっていたんじゃないかと思う」

宮城県石巻市立大川小学校の遺族のひとりが提訴後の記者会見で絞り出したこの言葉は、「あの日」以来過ごした3年の歳月がいかに重く、またもどかしいものであったかを物語っています。

震災から3年が経過しようとする先月10日、児童・教職員84人が津波の犠牲となった大川小学校の遺一部の族が行政を相手取り仙台地裁に損害賠償請求の訴えを起こしました。これまで遺族に対する説明会、文科省か関与した四者円卓会議、さらに2013年2月に設置され「最終的な検証の場」と認識されていた第三者による「事故検証委員会」を経ても、遺族が十分に納得できる報告がなされなかったということになります。

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それに先立つ8日、池上正樹・加藤順子の両氏による著作「石巻市立大川小学校『事故検証委員会』を検証する」が上梓されました。本書は2012年10月に出版された同じ著者による「あのとき、大川小学校で何が起きたのか」の続編に位置づけられるものです。

2つの作品の境界となるのは、遺族側と石巻市教委との話し合いが膠着しているのを「放置できない」とみた文科省が事実検証準備のために「四者円卓会議」を設置した時期と一致します。「四者」とは遺族、石巻市教委、宮城県教委、そして文科省。方針に沿って設置された「事故検証委員会」の立ち上げから具体的な検証内容、中間報告から最終的な結論に至るまでの各当事者たちのやりとり、経過を著者は文字通り「微に入り細にわたり」文字に記録していきます。

1年間にわたる検証委員会の具体的な内容は本書の他、元原稿となった「ダイアモンドオンライン」の池上氏の連載「大津波の惨事~大川小学校~揺らぐ”真実”」を是非追って頂きたいと思います。もちろん私はその内容の真偽や是非についてコメントする情報も知識もありませんが、「継続的に事の推移を追ってきて、そして実際にその場に居た人だけが表現できる」迫力に満ちた著者のペンさばきに圧倒される自分に気付きます。そこに「真実を明らかにし世に出したい」というジャーナリストとしての性(さが)、使命感があふれているからでしょう。

「警報が鳴り響く、寒い校庭で、じっとしゃがんでいた子供たちに、もっともっと目をこらしてほしかった。せめて、不十分な検証結果であると明記してほしいと思います。これだけの大雪は、溶けた後も記憶に残るでしょう。これだけの事故なのに、真実は記録されないまま、消えてしまうのでしょうか。悲しみだけが降り積もります」

昨年11月に立ち上げられた「小さな命の意味を考える会」の代表を務める佐藤敏郎氏は、2月の大雪の降った日のブログにこう書き残したといいます。行き場のない遺族の心情が、裁判という形に向かったのは想像に難くありません。

提訴した遺族にはこれからまた、長い長い戦いの日々が始まります。私たちが出来ることは事の推移に「深い関心を寄せる」こと以外にはあまり見つかりませんが、だからこそ「一人でも多くの人が高い関心を寄せ、どこまで自分自身や周囲の問題として捉えられるか」が質の高い検証を生み、惨事を繰り返さないための原動力になると信じます。

Categories: オピニオン

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