「暮らしのなかの健康講座」第1回 リポート1

 「暮らしのなかの健康講座」第1回が9月28日(日曜)に開催されました。
講師は、生活クラブ風の村園生診療所所長の佐賀宗彦先生。テーマは「在宅医療について」~地域に根付いた医療活動の現状と課題~です。たくさんの参加者が来場され、笑顔あり、感心納得あり、驚きの内容があり、充実した2時間の”学習”になりました。

 

 講座は、主催の千葉市生涯学習センターの開会の辞、企画運営の一般財団法人いのち輝く未来財団・上野光一理事長からのメッセージ、そして、佐賀宗彦先生の講演となりました。
「在宅医療について、ということでお話いたしますが、私の講義は『在宅医療漫談』みたいなものですから、気楽に聞いてください。その前に、私がどこの誰かわからないでしょうから、自己紹介と私の職場の紹介から始めたいと思います」
 佐賀先生のお話は、こんな言葉の自己紹介から始まりました。そして、現在の医療健康についての大事な事柄がつまっていました。ユーモアにあふれ、あきることなく多くのことを学ぶことができた講演でした。

講義の内容(配布された資料より)

 * 自己紹介:私の職場と仕事
 * 在宅医療とは:その多義性と現在的意義
 * 在宅医療への期待:その注目の歴史的意義
 * 地域包括ケアシステム:かろうじて残された未来の可能性
 * 健康長寿への至難の挑戦:メタボ・ロコモ・フレイルとの闘い
 * 訪問診療の実際:園生診療所の経験から
 * 質疑応答:何でもお答えします

内科医として30年、そして介護福祉、
ご経験からのリアルなお話を聞きました。

 佐賀先生は、内科医として活躍されてきました。「30年間、病院の医者をしてきました。ずっと一般内科医という、大學医局生活も知らない普通の医者ですらないただの医者ですよ」と自己紹介からユーモラス、ウィットがきいています。
 「医者としての後半は介護福祉に近いところに、引き寄せられるように仕事の重点が移ってきました。そして、3年前に社会福祉法人に席を移して、2011年8月に園生診療所の所長として仕事を始めました」とのこと。いま先生は、外来診療、訪問診療を自らされていて、「在宅療養支援診療所なので、24時間電話を受ける体制。1日に平均5~6人を診てまわります」 これには聴く側の背筋がピンと伸びました。
 質疑応答もふくめて2時間。その中で、特に印象深かったことをご紹介します。

 

1.在宅医療の概略

「今回のテーマの在宅医療、狭い意味の在宅医療とは、病院医療や外来医療と並ぶ第三の医療としての在宅医療です」
 1992年に医療法に規定された第三の医療としての在宅医療の定義を教えていただいた。それは、「病院医療」ではなく「在宅医療」。「病院医療」に対する「在宅医療」だ。自宅に限らず、居住系施設(有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など)、つまり病院でなく外来通院でもない、それ以外の場所での医療を在宅医療と理解すればよいようです。その内容は、「看護・介護」と一体となった「在宅ケア」の中の医療で、「訪問診療」という一連のデリバリーサービス。
 加えて、様々な在宅医療の形“多様性”についても教えてもらった。
 ●「開業医への通院」(宅診)に対する「往診」
  昔の開業医の先生は「宅診」という言葉を使った。
  これに対して「往診」は患者の家に赴くこと。
 ●「入院医療」に対する「外来医療」(診療所医療)
  通院しない日は家にいるのだから、通院も確かに在宅医療だ。
 ●「入院施療」に対する「在宅療法」
  例えばインスリンの自己注射のような自己管理療法。
  18種類ほどが認められている。
 自宅で透析をしている人もいる、というお話には驚きました。

 

2.現在の「在宅医療」とは

「目標は、住み慣れた地域で安心して生きること。安心できる自分の部屋で暮らすのが一番いいのです」
 住み慣れた地域で安心して生きていくことを保障する地域医療システムが、現在の在宅医療。具体的(狭義)には、医師が、通院困難な患者の居宅を訪問して、診療を行う医療とそのシステムのことだ。「訪問診療」に近い医療。「訪問診療と往診のどこが違うか」は、往診が1回毎なのに対し、訪問診療は、契約を結んで、計画をたてて定期的に出かけて行って診療する。
 在宅医療が進んだのは「病院ですることの多くを、自宅でできるようになった」からだ。

 【在宅医療の対象領域】
 ● 末期がんの緩和ケア
 ● 老年症候群に対する高齢者ケア
 ● 呼吸不全、神経難病等内部障害終末期(リハビリテーション医学)
 ● 小児在宅医療
 ● 精神科在宅医療

 

3.「死に場所」について

「在宅医療を語るうえで、死亡場所の推移の話は欠かせません。1951年には、8割9割の人が自宅で死んでいます。家で死ぬのが当たり前だった時代が大きく変わって、9割の人が病院で死ぬようになったのです」
「もとに戻すことはできません。もう自宅で8割の人は死ねません」

 【1951年から2000年までの「死亡場所の年次推移」のデータから知ったこと】
 ● 自宅での死亡率は右肩下がりで大きく減った。12%強。
 ● 病院で死ぬひとの割合は、10%弱から90%まで大きく増えた。
 ● 施設で亡くなる人は、数パーセント。

 【死亡場所別、死亡者数の年次推移と将来推計から学んだこと】
 ● 病院で死ぬ人の数は、ほぼ一定と推計。
 ● 自宅で死ぬ人が増える努力はされているが、劇的には増えない。
 ● 施設で亡くなる数パーセントは、ずっと変わらないと推計。

 この結果、団塊の世代が死ぬ時代、平成25年、35年になると、死に場所がない。
「死に場所難民」急増になるのだ。

 

4.「死に場所難民」急増への対策

「介護施設、特養が作られるけれども、そんなには増えません」

 【現状は】
 ● 病院での看取りは増やせない。
 ● 施設での看取りにも大きな期待はできない。

 【対策としては、次の3つが重要】
 ● 自宅死亡率を増加させる在宅医療の充実
  寝たきり老人、終末期がん患者の在宅ケアが中心になる。
 ● 高齢者向け住宅の整備、住み替えの促進(死に場所の創出)
  国から補助金が出る。
  「居住系施設」を作る。介護や医療は外付け。
  介護や医療の外付けとは、外からの“デリバリー”で対応すること。
 ● 自宅、地域に住み続けられる包括ケアシステムの整備
  システムというよりは、ネットワークを意味している。
  生活支援サービスはボランティアによる新たな互助を中心に。

 

5.国の施策「地域包括ケアシステムについて

「“かろうじて残された未来の可能性”タイトルが暗いね(笑)。地域包括ケアシステム、システムというが、ネットワークですね、これが国の施策です」

 【厚生労働省の文章】
 『団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムを構築していきます』

 【ポイントは】
 ● 4つの支援「自助・互助・共助・公助」
 ● 一番大きく、大切と表示されているのは自助
 ● 最も小さく表記されているのは公助
 ● 公助の表現が小さいのは「国のギブアップ宣言」
 ●「自分たちでやりなさい、と言っている」

 【つまりは「在宅シフト」】
 ● できるだけ住まいで。できるだけ地域で。
 ● 一時的には入院するにしても、基本的には家で暮らす。

 病院から出るなら、どうせ帰るなら自分の家がいいです。

Categories: オピニオン

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